猫の幼稚園の感染症対策2

■FIP 猫伝染性腹膜炎について




不治の病から治る病になったことへの期待

ほんの数年前までは治療法がなく、対症療法の末に看取ることしかできなったFIP。
猫の幼稚園でも疑い含めると35匹がFIPで永眠しています。
卒園生での発症を含めると倍以上になるでしょう。
パルボとFIPがなければ、保護猫の生存率は格段に上がるだろうと実感します。

そんな中で2024年10月、数年ぶりにFIP発症猫がでました。

立て続けに4匹、1か月以上ずれてもう1匹が発症、計5匹。

久しぶりのFIP、それも複数の発症でかなり精神的にも経済的にも危機的状況に
陥りましたが、今は治る病気になっているFIPなので、色々な情報を精査して、
5匹にはそれぞれ新薬を服用させて治療にあたっています。
※日本には2025年現在、FIP治療薬として承認された薬はありません。

新薬での治療は初の試みなので、私たちが経験したことを記しておきます。
同じ志を持つ皆さんに参考にして頂ければ光栄です。

新薬の登場

不治の病から治る病へ


この数年で、新しい(未承認)薬GS-441524がアメリカの製薬会社ギリアド・サイエンス社から開発されたとの情報があるものの、一般市場に販売されることがなく、残念に思っていたいました。
その薬をベースにした中華製の薬で治療されるケースが増えると、子猫で100万大人猫なら300万の費用がかかるとか、ライセンスを持つギリアド・サイエンス社から訴えられているとの情報もあり、倫理的にも金額的にも納得できるものではないなと思っていました。

また、2023年にはモルヌピラビルがFIP治療に有効との学術論文が、千葉県佐倉市ユーミー動物病院の佐瀬獣医師により発表されたことも、大きな反響を呼んでいるとの情報も耳にしました。
モルヌピラビルは人の新型コロナウイルスCOVID-19治療薬で、新型コロナウイルスが5類感染症に指定変更されたことで、獣医師さんが一般的に扱うことができるようになりましたので、動物病院で扱うところが増えました。

これらの情報が出ている間、猫の幼稚園ではFIP発症の園児が皆無だったので、情報の積極的な更新をせず簡単な聞き齧り程度での知識でよしとしていました。(FIP発症は卒園生では年に数匹程度ある年と全くない年とがあります。)

今回複数園児のFIP発症にあたり、主治医の経験と情報だけでなく、寛解経験のある飼い主さんや詳しい情報を持っていた方のアドバイス等から、イギリスBOVA社のGS-441524錠剤とレムデシビルを主治医の尽力で輸入して貰うことができ、元々この主治医の病院で使用していたモルヌピラビルでの治療と合わせて選択肢を増やしていただくことができました。

このBOVA社のGS-441524は、
・イギリス・オーストラリアでFIP治療薬として承認された薬であること
・いろんなGS-441524が作られている中で、一番品質が保証されていると考えられること
・日本では農林水産省の確認の元、獣医師だけが正式な手続きを経て輸入できること
以上が決め手となりました。

特許に関しては確かにグレーなのでしょうが…
ギリアド・サイエンス社が、動物用医薬品として製品化しないとしている事情とか欧州と米国の関係とか、色々な事情があるのでしょうか?
改善されることを期待しています。

GS-441524とモルヌピラビル 投薬の注意点

・GS-441524は錠剤です。体重に合わせて錠剤をカットして使います。最初の頃は病院側でカットして処方されていましたが、複数同時に治療することになって使用する量が増えると、ボトルで購入して、自分でカットして使うことになりました。ピルカッターを使う方が崩れて粉が出やすいので、ティースプーンを裏返して置き、そのカーブを利用して、左右の人差し指で押さえて力を加えて折る方が、綺麗にカットできました。粉になった部分も台紙に載せて口に流し込んだり、オブラートに包んで飲ませたりして、薬の量が不足することがないように注意しました。錠剤自体は苦くもなく、メーカー側はツナ風味と歌っているだけに、猫達は嫌がることなく飲み込んでいます。慣れてくると水さえ不必要で、喉の奥に落としてそのまま飲み込んでくれています。

・モルヌピラビルは人用の薬でカプセル入りの粉剤です。猫の体重に合わせてカプセルを外して分包処方でした。使う量が非常に少ないので、病院で分包して貰わないと、自分でカプセル外して必要量を取り分けるのは無理があると思います。猫の体重によっては整腸剤で嵩増しして貰っていました。使用していて感じた事ですが、モルヌピラビルは湿気に弱いようです。嵩増しなしで分包されている場合、時間が経つと分包袋に張り付くような感触がありました。飲ませる時には分包袋からオブラートに移して飲ませていましたが、袋に張り付いて残り易いのがネックになるので、処方は二週間以内にしておくとか、嵩増しして貰うと扱い易くなりました。
オブラートは丸い平形よりも筒形になっているものを使用した方が扱い易いと感じました。分包袋の口を切って逆さにして、オブラートの筒に突っ込む形で移すと、無駄なく移し切ることができました。
オブラートの上部は指でちぎって猫の口に入れ易い大きさに纏めて投薬しますが、錠剤と違って必ずお水を飲ませてやらないと、舌や喉にくっついてしまって飲み込むのが難しいようです。

どちらの薬も、ちゅーるなどに混ぜるのではなく、必ず単体で飲ませました。
投薬時間の前後1時間は食事なし。
毎日必ず同じ時間に投与すること。
一応前後30分は調整できるとの情報を見たので、時間を変更する必要がある時は、数日前から15分づつずらすことで調整しました。

朝の投薬前には、毎日体重測定も行いました。
84日間の投薬期間終了の2週間〜1週間前には、体重増加率が上がってくる子が多くかったのが印象的です。身体がFIPウイルスと戦う必要がなくなって、その分のエネルギーが体重増加に繋がっているのでしょうね。

あべのケース

推定2024/06末生まれ、2024/07/20入園
あべは多頭飼育崩壊現場の出身です。黒猫ばかり50匹位に繁殖してしまったケースで、行政に収容された時は350gちょっと。歯は生えているから離乳食のはずだけど、自分からは食べなくて、行政の獣医師職員さん達が手を焼いてうちに来た子猫です。
うちでも本当に食べさせるのに苦労した子で、食べさせても一向に体重が増えずヤキモキした経緯があります。
やっと自分から安定して食べ始めて安心できたのが8月後半、活発でよく遊ぶのに体重が増えなくて、心配が続いていました。
繁殖の経緯から血が濃いのが原因で、なにかあるなと覚悟して、譲渡対象から外しました。
9/24 FIPドライかも?と考え受診して外部検査期間にて検査。
9/27 検査結果

ゆうひのケース

みーしゃのケース

京也のケース

やおのケース